都内で買いだめ収まらず 企業の対応も焼け石に水

東日本大震災の被害が深刻化し、計画停電の広がりが生活を直撃する中、首都圏のスーパーでは、食料品や生活必需品などを買いだめする動きが一向に収まりません。都内のスーパーでは開店と同時に買い物客が押し寄せ、争ってティッシュペーパーや飲料水を買い込み、昭和48年の第1次オイルショックを再現する光景がみられている。メーカーには増産で対応する構えをみせるところもあるが、計画停電で思うように対応が進まず、沈静化どころか全国に広がり始めている。

■奪い合いに対応限界
 「1人1個まででお願いします!」
 東京都大田区の大手スーパーでは15日、開店直後から店員の連呼する声が響いた。店員が商品棚にティッシュペーパーを置いたそばから買い物客がひったくるようにかかえていく。店内のカップめんや缶詰コーナーの棚はすべてカラ。レジには、こぼれ落ちそうなほどに商品を詰め込んだかごを手にした買い物客の列が続いた。
 震災発生直後は、工場の稼働停止や物流の混乱で供給不足に陥った。その後はメーカーの増産態勢の確立や、小売りの物流態勢の立て直しを急ピッチで進め、週明けの14日からは「商品の供給は平常の水準に戻りつつある」(イトーヨーカ堂)そうです。
 しかし、スーパーやドラッグストアなどの小売店の店頭では、米やミネラルウオーター、カップめん、ティッシュペーパーや紙おむつ、乾電池などは品薄状態が解消しない

■メーカー、増産に着手
 逼迫する需給に、メーカーは対応の強化を急いでいる。乾電池では、電機各社が増産や数量確保に向けて動き出した。アルカリ乾電池で国内最大手のパナソニックは、大阪府守口市の工場で増産を検討。生産規模は今後詰めるが、年産6億個と国内需要の半分以上をまかなう同工場をフル稼働し、供給不足に対応する。東芝も通常の2倍の出荷量を確保する。
 紙おむつなどを手がけるユニ・チャームは福島工場(福島県棚倉町)が被害を受けたが、静岡(静岡県掛川市)、四国(香川県観音寺市)の両工場で12日以降、24時間体制で生産している。「供給態勢に支障はない」としている。
 カップめん最大手の日清食品も、操業を停止した関東工場(茨城県取手市)以外の生産拠点で、カップヌードルなど主力商品に注力した生産態勢に変更。「欠品は近く回復できる」としている。

■止まらぬ消費者の不安
 深刻なのは必要以上に品物を買いだめする動きが、震災の影響がなかった地域にも拡大している点だ。
四国地方ティッシュペーパーなどを生産する中堅メーカーでは「14日から関西、九州など全国の取引先から問い合わせが殺到しており、とてもさばき切れない」と悲鳴を上げる。
 「品数が少なくなっているから、消費者が『いまのうちに買わなくちゃ』という心理になっている」と大手ドラッグストアの担当者はため息まじりに話す。
 スーパー大手のダイエーは、品薄の続く商品を中心に「通常の数倍となる供給量を確保できるよう手配中。足りなければ、集めるエリアを広げる」と供給アップを最重要課題に掲げ、取引先にかけあっているが、思うようには確保できない。
 災害危機管理アドバイザーの山村武彦氏は「首都圏では、家屋被害などは比較的少ないが、消費者が実際に強い揺れを体感し、被災地の映像をテレビで見て危機感が高まっている。スーパーやコンビニも収益を圧迫しないよう、在庫を抑制しているため、品薄に拍車がかかった」とみている。